会社退職時の年金切り換えに係る法律関係まとめ

コラム

 会社員(公務員)を退職して無職となる際、年金の切り換えについて、どこのサイトを見ても根拠となる法律が書いていないから、個人的に信憑性に欠ける。

 ここでは根拠法令と日本年金機構の「ねんきんダイヤル」への相談内容を元に、会社員(公務員)が退職する際の年金の切換手続き(種別変更と言う)について法律関係についてまとめる。

国民年金/厚生年金保険料の納付義務

 まず前提として、20~60歳のすべての国民は、国民年金の被保険者となり、国民年金の納付義務を負うこととなっている。

国民年金保険法 
第七条 (被保険者)
 次の各号のいずれかに該当する者は、国民年金の被保険者とする。
一 日本国内に住所を有する二十歳以上六十歳未満の者であつて次号及び第三号のいずれにも該当しないもの(第一号被保険者⇒自宅警備員(俺)
二 厚生年金保険の被保険者(第二号被保険者⇒会社員、公務員
三 第二号被保険者の配偶者(第三号被保険者)

第八十八条 
 被保険者は、保険料を納付しなければならない。

 会社員時代は上記のとおり、国民年金の被保険者であると同時に(国年金法7①二)、厚生年金の被保険者でもあるので(厚年9①)、厚生年金の保険料を給与からの源泉徴収により負担している(厚年82①、84①)。会社はその源泉徴収した保険料をその人の代わりに納付する仕組み(厚年82②)。因みにこの時、会社はその会社員の負担する保険料の1/2を負担している。

厚生年金保険法
第九条(被保険者)
 適用事業所に使用される七十歳未満の者は、厚生年金保険の被保険者とする。

第八十二条 (保険料の負担及び納付義務)
 被保険者及び被保険者を使用する事業主は、それぞれ保険料の半額を負担する。
2 事業主は、その使用する被保険者及び自己の負担する保険料を納付する義務を負う。

第八十四条 (保険料の源泉控除)
 事業主は、被保険者に対して通貨をもつて報酬を支払う場合においては、被保険者の負担すべき前月の標準報酬月額に係る保険料を報酬から控除することができる。

 こう見ると、厚生年金を負担している会社員でも、国民年金の被保険者であるので、国民年金保険料も負担する必要があるように見えるが、その必要はない。会社員=第二号被保険者として下記の特例の対象となるからである(国年94の6)。

国民年金保険法 
第九十四条の六 (第二号被保険者及び第三号被保険者に係る特例)
 第八十七条第一項及び第二項並びに第八十八条第一項の規定にかかわらず、第二号被保険者としての被保険者期間及び第三号被保険者としての被保険者期間については、政府は、保険料を徴収せず、被保険者は、保険料を納付することを要しない

退職時の法律関係

 会社員は国民年金保険法上の第二被保険者に該当し、その被保険者期間中は国民年金の保険料を納付することを要しないことを上記で確認した。

 ところが、会社を退職すると退職日の翌日に第二号被保険者としての資格を失う(厚年14①二)。

厚生年金保険法
第十四条 
 第九条又は第十条第一項の規定による被保険者は、次の各号のいずれかに該当するに至つた日の翌日に、被保険者の資格を喪失する。
一 死亡したとき。
二 その事業所又は船舶に使用されなくなつたとき。
三 第八条第一項又は第十一条の認可があつたとき。
四 第十二条の規定に該当するに至つたとき。
五 七十歳に達したとき。

 こうなるとこの特例(国年94の6)が使えなくなるので、厚生年金保険料の納付義務はなくなるが、今度は国民年金の第一被保険者(自宅警備員)として、国民健康保険料を支払う義務を負うという流れ。

 では、具体的にいつからの分の国民年金保険料を支払うのかというと、特例の対象となる第二号被保険者の「被保険者期間」の数え方を調べなければならない。

国民年金保険法
第十一条 
 被保険者期間を計算する場合には、月によるものとし、被保険者の資格を取得した日の属する月からその資格を喪失した日の属する月の前月までをこれに算入する。

 月末退職の場合、その翌日(翌月1日)に資格喪失となるから、その前月、要は退職月まで第二号被保険者期間とされる。このため、第一号被保険者として国民年金を支払い始める必要があるのは、退職月の翌月分からとなる。

 月末以外の月途中の退職の場合、その翌日の資格喪失日も退職月と同月であるから、退職月の前月まで第二号被保険者期間とされる。このため、第一号被保険者として国民年金を支払い始める必要があるのは、退職月分からとなる。

 また、国民年金は前月(1日~月末)の保険料を翌月末までに支払う必要がある。

国民年金保険法
第九十一条 
 毎月の保険料は、翌月末日までに納付しなければならない。

 このため、月末退職の場合、再就職する場合でも1か月以上無職となるなら、退職月の翌月分(翌翌月納期限)からの国民年金を納める手続きをしなければならない。逆を言えば、1か月以内に再就職する場合には、第二号被保険者としての被保険者期間は途切れないので、特例が使えて国民年金を自分で納める必要はない。月途中の退職の場合は、その退職月を跨いで無職期間が継続する場合に、退職月分からの国民年金を納める手続きをしなければならない。

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