10月末に国家公務員を退職し、今日でちょうど3か月になる(執筆時)。今までタイにバックパッカーとして旅行したり(1月間)、北海道を車で一周したり(1週間)と、自分でも充実していた日常を過ごしていると実感できていた一方、退職後2か月を経過してからはその生活は怠惰なものとなり、昼夜逆転廃人生活となってしまっている。社会人として働いていた頃の始業時間が現在では就寝時間、終業時間が起床時間といった具合に、人間的で文化的な生活ができていない現状は大きな課題となっていた。
ここではそんな退職後2か月で廃人になってしまった俺の3か月目の所感を記録したいと思う。
ノープランで退職したことに後悔があるかどうか
まず、国家公務員を退職して後悔をしているかについてを綴っていきたい。
結論として後悔は全くない。退職当初は時間の経過とともにほとぼりが冷めれば、退職について後悔をするのではないかといった内心の不安もあったが、今まで後悔の感情は湧いていない。強がっているように聞こえそうだが実際そんなこともなく、仮に俺に今子供ができて進路の相談をされたときにも、国家公務員を勧めることは無いし、同じ職場に戻りたいとは思わない。
前職の職場ではもうやれることは無く、後は時間を使うだけの状態であった。それと比べて無職期間にチャレンジできるものはどれも新鮮で、脳汁が出た。ブログやクラウドワークスのライティング請負いといった新しい挑戦は、自分の視野を格段に広げ、公務員の身分のままでは見れなかった景色をたくさん知ることができた。自分のできる事や視野が格段に広がっていく感じが、未来に希望を抱いていた新卒の頃と似ていて、懐かしく感じている。自分がやったことに対してお金や感想といったリアクションが返ってくることが、自分が世界を動かしている感があって楽しい。国家公務員の頃は自分がやったことが当然の役割として世の中に吸収され、上司や国民からのリアクションはほとんどなく、常に自分との戦いだった。
新たな感情「焦り」
一方で世間から見れば「29歳無職独身」という肩書はかなり強烈なものとなっており、ふと自分の現在地を俯瞰してみると、一過性の焦りが出てくることがある。周りの友達は結婚している人が大半で他人と比べてしまうと余計焦りを感じる。人生の幸福度において、独身男性と既婚男性では幸福度にかなり差が開くことが研究で証明されている。このため将来は結婚を考えているが、将来自分の妻になる人のことを考えると、自分にしっかりとした経済基盤と精神的安定がないと相手を不幸にさせてしまうのではないかと考えている。このため、まずは自分の土台をしっかり築いた後の恋愛になるのだと思うが、結婚適齢期も迫ってきていることから、自分の人生の方向性を早急に決めることを迫られている。
また、マネーフォワードの資産残高が毎月減り続けていることにも焦りが込み上げてくる。終わりがあるのをわかっている状態では、現在を本当の意味で楽しむことができない。現在ではあと2年間程度の生活費を捻出できる資産があるが、それでも「焦り」を感じる。将来への過度な不安を感じるという点で、俺は将来が不透明である個人事業に向いていないということが分かった。安定基盤を保ちながら収入の増加に繋げていく方が自分の性格に合致していることを学んだ。
無職生活はストレスはないが成長もない
無職生活は上記のとおり辛さもあるが、ストレスが基本ない為、圧倒的に「快適」である。仕事をしていた時と比べると圧倒的に過ごしやすく平和であるため、プラス思考を持てることが多くなった。前職では将来への「不安」はなかったものの、この仕事を定年まで続けるといった「絶望感」と「閉塞感」をかなり感じており、特に最後の3か月は明日の仕事が嫌でしょうがなかった。日曜日から木曜日の夜はいつも憂鬱でマイナス思考に取りつかれていた。無職期間を作ることで預金残高が減っていく「不安」はあるが、「希望」と「前向きの自分」を取り戻してきている。
一方で成長いう観点でいえば在職時よりは後退していると言わざるを得ない。当然ではあるがストレスがなく快適で平和な日常は、何も乗り越える必要がないので怠惰に流れやすく、学びが少なっていると感じる。また、人に会うことが少なくなってきているため、徐々にコミュニケーションスキルが薄れ、社会復帰から遠のいていく感覚がある。転職面接では、普通の話をしているのにもかかわらず滅茶苦茶疲れるし、自分の考えがまとまらないことも少し出てきた。まだ正常に話せてはいるが、無職期間が長期に及ぶと言語能力が衰退することは身をもって体感した。
昔より「今」を生きている
昔は将来の自分のために今を生きていた。例えば「将来退職金がもらえる」「将来税理士資格がもらえる」「このままいけば将来出世できる」「将来この業務ができる」・・・といったように将来のために「今」を捨てていた。いずれ自分のためになることを第一に考え、耐えることが美徳とする価値観があった。そもそも今の積み重ねが将来を作るのだから、今を生きれていない時点で将来なんて作れるわけがないのだが、当時の俺の考えは甘かったと反省している。
無職期間では昔より今を生きれていると感じる。自分のやりたいことをノーストレスですることができている。言い換えれば、やりたくないことはやっていない。今の自分の選択が全て形になって自分に返ってくることが新鮮で、自由に生きている感覚がある。
やりたいことなんてそう簡単に見つからない
前職の仕事といったやりたくないことは明確にあったものの、やりたいことが見つからない。クラウドワークスやランサーズ、転職サイトを見ていても、これと言ってやりたいことも就きたい仕事も無い。怠惰となり行動もしないため、やりたいことを発見できないという負の無限循環サイクルに突入している。
「やりたいことの見つけ方」(八木仁平氏 著)を読んでみたりしたが、なかなか答えを出すことができなかった。「やりたいこと」は、今まで自分がしてきた経験値を基に考えた、将来の理想(ベンチマーク)であることから、現在やりたいことが無いのなら、アクションを起こして経験を積む必要があると考えた。このことから、退職後2か月を経過したところで転職活動を開始した。何もしたいことが無いのなら、何かをしたいと言えるまで行動し、前進し続けるしかない。
ノープランで退職は御法度なのか
結論はノープランで退職しても問題はないと感じる。田舎だからではあるが、転職活動中にはどこに行っても国家公務員の経歴には食いついてくれるし、実際に「こんな優秀な人が」と言われる。
就職について興味があまり湧かないため、エントリー自体が少ないが、そんな中でも実際に複数社から内定を貰った。書類選考で落ちる場合を除いて面接に進んだ企業全てから内定を獲得している状況である。これは一般の就活生と比べればいい方なのではないかと思う。また、国税は自分の活躍が数字に出る。数字として結果を出してきたことが、就職活動においてかなり強みになっていると感じた。
国税徴収のスキルはマジで役に立たないが信頼される
国税徴収官の仕事は手続法である国税徴収法の運用である。この仕事は経理職や法務との親和性はあるが、民間実務で使えるかと言われればかなり怪しい。企業の経理職は、企業の月次決算整理を中心とするため、法人課税部門の知識が必要となるが、国税徴収の知識は基本使う場面がない。また、税理士事務所での仕事も同様である(こちらは所得税の確定申告書を作成する機会があるため、個人課税部門の知識は活用できる)。法務事務は基本未経験者や非法曹者の採用が少ない。未経験者採用枠があっても、ロースクール卒業生や司法試験離脱組を採用の対象としている企業が多く、採用の対象とならない。
他に国税徴収官の転職候補としては債権回収という点で親和性のある民間のサービサー業界がある。しかし、民間サービサーには自力執行権がないため、強制徴収する際の手続きにおいては親和性が薄い。また、民事執行法に基づく強制回収手続きは結局、最終的に企業の顧問弁護士に委任され、サービサーが直接法律を運用する場面はかなり限られるため、学習した法律知識を活かす場がない。また、民事執行法や民事保全法については国税徴収法と付随して勉強をするものの、本腰を入れて学習するものではないため、経験者より圧倒的に市場価値が劣る。
国家公務員OBとしては、シンクタンク系企業が転職候補として挙げられるが、これはあくまで、国家公務員の中でも政策立案に関わった官僚が重宝されるのであって、現場のソルジャー要員である一般職職員(国税徴収官)は相手にされない。この点、一般職職員でも霞が関に出向していた場合には即戦力として重宝される可能性があると考える。
一方で国税徴収官の強みは、業種や個人法人問わず膨大の数の企業状況を分析してきたことであると考える。抽象化すると、相手の資力調査(経営課題のあぶり出し)と納付の方法を模索(課題解決の提案)していくといった点で、企業の営業職にかなり親和性があるものである。実際に営業職ではかなり受けが良かった。面接や説明会では十中八九コミュニケーション面が褒められるため、自分でも気づかなかったが、話すことが上手いのかもしれないと思い上がったりしている。また、国家公務員の職歴があることで優秀であるといった評価を受けることは少なくなかった。企業説明会では100%食いついてくれて、興味を持ってくれた。
20代という事実に救われる(給料はアップ、福利厚生はダウン)
俺は幸いにも前職給与以上の給与の提示を受け、概ね満足のいく転職活動ができた。一方で国家公務員でデフォルトとなっていた住宅手当等の各種手当はかなり薄くなったのが現実である。国家公務員の福利厚生は、日本でも有数の大企業と同水準であることを実感した。
今回の転職が上手くいったのは、やはり20代である事実が優位に働いたことが大きい。求人を見てきて思うのが30台になると本当に未経験転職の幅が狭まる。早い決断ができて本当に良かったと思っている。退職時の慰留に乗っていたらどうなっていたことか考えるだけでゾッとする。
公務員で仕事を辞めたいと思っている人は時がたつにつれて「手遅れになる」現実があることを認識する必要がある。今公務員を辞めたいと思っている人は早急な舵取りが必要であろう。30歳の次の転職の壁は35歳。30歳未満の未経験OKの求人数は30歳となった途端1/2に、35歳となった途端1/10社程度に減少するのが転職者としての体感である。このため、社会で生きていくためには35歳までに定年まで勤めあげることができる自分に合った会社を見つけるか、スキルを身に着ける必要があると感じる。
転職フェアで自信を得る
先日転職フェア(合同企業説明会)に行ってきた。転職フェアについての最初の印象は、国家公務員採用試験の後に行われる合同官庁説明会のようなものだと想像していた。少しでも人事の人に顔を覚えてもらえるよう、開始時間になったらパチプロのように一斉に官庁説明ブースに飛び込み、最前列の傍聴席を確保したり、積極的に鋭い質問を行うといった人事担当者に対するアプローチであふれている意識の高い場なのかと思っていた。
ただ結果はその逆だった。よれよれのスーツ、ネクタイは上まで閉まってないし、髪はボサボサ、爪や靴が汚いといった「この人大丈夫か」といった人が少なくとも約半数を占めており、質問も「転勤はあるのか」など初歩的なものばかりであった。
また、企業の人事担当者も話が下手な人が多かった印象がある。例えば某メーカーの営業職の業務説明では、いきなり塩と胡椒の話をしはじめ、「塩にはいろんなメーカーがある」、「いろんな味と持ち味がある」「あなたは夏に何が食べたい?」「夏には野菜が合うと思う→野菜にはトマトやニンジンがある」という話を5分始め程話し始めた。何の話なのか終盤まで分からなかったが、どうやら言いたいことは「サンドイッチ等のメニューを提案し、そのメニューを構成する材料(自社商材)をクライアントのニーズに合わせて組み合わせ、提案する(売る)」といった話だったことが説明開始5分後でわかった。結論を先に話さない話し方が、聞き手にとってこんなにも苦痛なのかということを体感できた。この話し方の人事が営業職を募集していることが今でも信じられない。
また庶務事務の受託会社では、説明の際には「めっちゃ」とか「なんすよ」とかビジネスの場では不適切な話し方を多用している人事担当者がいたり、業務とは関係のない企業の立地を「町ブラして帰れる素晴らしい立地」と猛アピールしていたり、価値観が大学生止まりの人事担当者がいたりした。
人事担当者が個人情報に対して軽視していることも危機感を感じた。マイナビに登録されいてる経歴等が書かれた面接シートを人事担当者に提出し、説明会が始まるが、他人の経歴内容が説明中丸見えであった。他人の名前や出身大学、職業まで見ることができる状況で、仮に税務職員が申告書を同様に扱った場合は懲戒ものであり、民間企業の個人情報保護の意識がかなり低いことに危機感を感じた。
こんな人たちがひしめき合っている会場の中に俺もいたが、悪いが俺は100%民間でやっていけると確信した。振り返れば前職では、個人情報保護の重要性やビジネスマナーは膨大な数の申告書の取り扱いや数多くの経営者との折衝で自然に身についていたのだと感じる。
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