久々にブログを開いてみると公務員試験の時期であることから公務員関連記事が伸びている。俺は国家公務員を退職後、約半年のニート期間を経て、民間企業に転職をした(現在採用から約6か月程度)。業種等の詳細は伏せるが、未経験の業種であり、仕事の勝手が今までと異なることも多く、苦戦していることが多々ある。
ネット上には実際に公務員から転職したはいいものの、その後について語られている記事が少ないと感じる。
そこでここでは、国家公務員を辞め、適当な民間企業に就職した俺が現在感じている仕事の勝手の違いを綴っていくことで、民間転職を考えている公務員に対して有益な情報を届けたい。
仕事に正解がない
公務員の仕事は行政機関として法律や法令解釈通達に基づき仕事のやり方、手順が細かく規定されている。手順は実施要領として膨大なページの資料で残されており、どこに何が書いているのか探すのが大変であるが、その要領を読み、周りの仕事を見ていれば、「マネする」ことで何とか仕事ができる。絶対的な仕事の仕方が一つに定まっているため、他者が出していた仕事の正解から逆算して仕事をすることができていた。
一方、俺が就職した民間企業では仕事の正解については各々の解釈で決まっていることが多く、どこにも仕事の正解が書かれていない。それぞれに正解があるので、未経験と言っても正解を誰も教えてくれない(教えられない)。みんな分からない中、自分の中のロジックを正解として設定し、自分のやり方が正しいという前提の元、仕事の方法を各々で考え実行している。このため、出力する成果物についても、その人ごとにクオリティが異なる。
これは均一なサービスが求められる行政との差であると感じる。ある意味民間企業では裁量が多く認められている証拠である。
俺はすぐ正解から仕事のやり方を逆算する癖がついており、この仕事の勝手が大きく異なることで、現状かなり苦労している。正直「これでいいのか」といった不安の中、暗中模索している状況であるが周りを見ていると先輩方も多かれ少なかれそのような状況にいると見える。
人間関係がかなりドライ
国家公務員の時はブログに記載したとおり人間関係はかなりウエットであった。仲のいい同期を作ることができる一方で閉鎖的職場での人間関係については疲弊する部分も多かった。
一方で民間企業での人間関係はかなりドライである。コンプライアンスを異常に気にするので、表層では年下にも年上にも敬語で丁寧に接し、基本的にはプライベートに踏み込む話はしない。
みんな自分の目の前の仕事に精一杯で雑談が皆無であり、横の繋がりよりも目の前のクオリティを追っているように思う。隣にいる人間が仕事以外でどういう人間なのか、どういう考えを持っているのかについてよくわからないし互いに関心もないように思う。
俺も例えば後ろに座っている社員が昨日死んでいても、全く感情の振れ幅が無い自信がある。
世の中の表層を生きている
国税職員時代では滞納者の滞納理由などを深堀して確認することが仕事であった。この際、かなりプライベートな話も出てくる上、財産の調査の過程では世間一般では決して表に出てこないような、かなりディープな現場を繰り返し目の当たりにする。綺麗事が口が裂けても出てこなくなるような、どうしようもない残酷な現実を直視することが度々あった。行政の仕事は法律の執行と運用ではあるが、最後の最後は法律が通用しない世界での「人と人」の仕事であることを学ばされた。
一方で民間企業では上記に比べ、そのようなディープな現場はなく、対照的に表層の世界で仕事をしている感覚がある。あくまでクライアントとの契約による履行義務を全うするだけなので、精神的には比較的楽ではあるが、どこかこれでいいのかという感じがある。理想と現実の理想の部分だけで仕事をしている感じがして違和感がある。証券会社の社員がお金持ちの資産をさらに増やすだけの仕事に疑問を持つ感覚に似ていると思う。
結局コンプラを滅茶苦茶気にする
国家公務員には倫理規定があり、倫理に反することがあれば直ちに信用失墜行為として処分される他、職務の中立性及び公平性の観点から様々な制約が課されるのは、社会に周知されているとおりである。
ただ民間企業においてもコンプライアンスの遵守に注力していることが分かった。特に守秘義務の遵守とハラスメント、職場環境の部分ではかなり細かく規定が定められている上に、かなりの頻度で順守を促すアナウンスがなされている。
前回、マイナビ就職フェアに行った際の所感を綴った記事を投稿したが、その際懸念していた企業のコンプライアンス意識の薄さは全く感じなかった。
何を知っているかではなく、何ができるか
民間企業では公務員と違って「何を知っているか」若しくは「何を経験しているか」ではなく、「何ができるか」で差が出ると感じる。
国家公務員の仕事は前述のとおり、仕事の正解が一つに定まっているので他社のやり方を真似する等、正解から逆算して仕事をすることができる。このため、仕事をした経験や知識が2回目以降の仕事に直接活かすことができ、何を知っているかで仕事に差がつくものであったと感じる。
一方で、民間企業に関しては様々なケースそにおいてれぞれ正解が決まっていないので、仕事を柔軟に咀嚼しかつ最適解を各々が仮置きした上で、効率よく捌いていくといった能力が求められるように感じる。民間の仕事はどんな仕事でも適応できるジェネラリストのような能力が求められることが分かった。
現状、国税徴収のスキルに関しては大半は使えない知識となってしまったものの、財務諸表の普遍的な会計知識の他、文書の作成能力、メールでの折衝と調整力、スケジュール管理などの仕事でいう「動詞の部分」に関しては役立てられていると感じる。
外国人が多くて新鮮
国家公務員は日本国の公務員であるため外国人の登用が完全に制限されている。外国人が普通に社内におり、英語や中国語などの言語が飛び交っている。また普通に日本語で会話していた先輩が電話をとった瞬間英語で話し始めていて面を食らった。
今まで気づかなかったが、日本企業においてもグローバル化の波が既に到来していることを感じることができた。昨今、D&I方針を打ち立てる企業もかなり多くなってきており、この世界の潮流を今更ながら感じることができた。
officeの知識は必須
国税の職場ではKSKシステムといった外界から完全に隔離されているシステムを扱い、日々の執務を行っていた。
一方で民間企業ではofficeやGmailなど世に出ているツールをベースに仕事をするのが一般的である。特にエクセルやパワポなどのが多用され、このツールの効率的な操作ができないと話にならないと感じる。一からofficeを教えてくれるわけではないので自分で学習するしかないが、知らない使い方があった場合には気づかないうちに非効率な仕事を続けていたなんてことになりかねない。利益追求の観点から必ず企業からは業務効率化が求められ、評価の軸ともなるため、俺のように何も知らずに中途採用されると面を食らう可能性がある。
意識が高い
民間企業ではみんな本気で自分の仕事をいかに効率的に処理するか、どのようにしてクライアントに求められている以上の成果物を出力できるか、価値をいかにして提供するかといったことを真剣に考えている。考えているそぶりをしているだけかもしれないが、公務員とは異なり自らが主体となって積極的に日々業務改善を考えて仕事のやり方を工夫している。
公務員では仕事の手順は基本的に定められていることが大半であるため、決められたことをするか、しないかの、いわば0か100かといった指標で物事を考えていたし、その結果を受けて評価されていた。
民間企業では自らの業務改善できる幅も格段に大きく、その出力する成果物の質はかなり細かいところまで評価がなされ、少しでもアウトプットの質を上げるということが求められる。上記のように0と100の二元論で考える仕事とは異なり、1パーセント刻みで、より良いものを提供するといった指標で物事を考えることが必要であると感じる。
終わりに
民間企業を経験して気づくことが多かった。賢者は先人が残した記録を自分の経験値として取り込み、今後の行動や意思決定に役立てることができると思う。
もしこの記事を読んでいる公務員から民間への転職を考えている人がいるのであれば、この記事がその人にとって、これからのマインドセットや転職準備の一助になることを願っている。
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